血液内科とは
血液のなかには、酸素を運搬する「赤血球」、細菌やウイルスなどの病原体と戦う「白血球」、出血を止める「血小板」などが含まれています。こうした血球などの数が減少したり、機能が低下したりすると、様々な問題が起こります。血液内科では、血液細胞の異常、血液細胞を作っている骨髄の異常、出血を止める働きの異常などがみられる患者様を対象として、必要な治療を行っていきます。
このようなときは血液内科をご受診ください
- 最近、疲れやすくなった
- 動悸が治まらない
- 耳鳴り、ふらつき感がある
- 頭痛がする
- 呼吸が苦しい感じがする
- 朝、起きるのがつらい
- 指の爪が上向きに反り返ってきた
- 風邪を引きやすくなった
- 原因不明の発熱が続いている
- ちょっとした出血でもなかなか血が止まらない
- あざや内出血ができやすい
- 健康診断で血液の異常値を指摘された など
主な疾患
貧血
一般的に貧血というとめまいや息切れをきたす場合に言うことが多いと思います。しかし医学的に貧血というものは赤血球の低下によって全身に十分な酸素を供給できなくなる病態のことを言います。これにより、めまい、立ちくらみ、動悸、息切れ、疲れやすいなどの症状が出現します。貧血は様々な原因によって引き起こされますが、とくに多いのが鉄欠乏性貧血です。これは、赤血球に含まれるタンパク質であるヘモグロビンをつくるための材料である鉄の欠乏から起こります。原因は出血によることが多くまずは消化器内科などを受診し止血を行うことが一番大事となってきます。また若い女性の場合月経によって認められる事も多いです。このほかビタミンB12の不足による貧血や自己抗体により赤血球が破壊されてしまう貧血など様々な原因があります。当院では、貧血を引き起こしている原因を詳しく調べたうえで、適切な診療科への紹介や治療を行っていきます。
血小板減少
血小板とは血を止めるために必要な血球となります。血小板が低下すると出血しやすくなり、身に覚えのないあざの出現や歯茎からの出血や鼻出血などが起こるようになってきます。原因については様々な場合があり、細菌やウイルスによる感染症や肝臓の病気、悪性腫瘍に伴う場合、膠原病など、血液の病気以外のことで起こる事が多いといわれています。当院では血小板減少の原因の検索や血小板減少以外の出血素因の検査などを行い、診断や治療を行っていきます。
白血病
白血病とは、「血液のがん」ともいわれ、遺伝子変異を起こした造血細胞(=白血病細胞)が骨髄で自律的に増殖することにより正常な血を造ることを阻害し、多くは骨髄のみにとどまらず血液中にも白血病細胞があふれ出てくる血液疾患のことを言います。
白血病細胞の増加のみでは一般的には症状の出現はなく、正常な血球をつくれなくなることにより様々な症状を起こします。正常な白血球の減少により、外から侵入してくる病原体への抵抗力が下がってしまい、ちょっとしたことで感染症にかかってしまうこともあります。正常な赤血球の減少により動悸や息切れといった貧血症状が出現したり、正常な血小板が減少することにより、鼻出血やあざなどの出血症状が出現してきます。患者様によっては、白血病細胞の増加によって肝臓や脾臓が肥大したり、骨の痛みが起こったりすることもあります。なお、白血病には様々なタイプがあるので、採血によって疑わしい場合は総合病院への受診をお勧めさせていただきます。タイプによって治療方針は異なってきますが、診断が確定したら、早急に抗がん剤による治療を行っていきます。
悪性リンパ腫
悪性リンパ腫は、成熟リンパ球による腫瘍です。(幼若なリンパ球による腫瘍を急性リンパ性白血病と言います。)具体的には、リンパ節、胸腺、脾臓、扁桃腺などの組織・臓器に問題が起こります。なお、リンパ系組織は全身に分布しているので、悪性リンパ腫は全身に発生する可能性があります。
症状としては、リンパ節の腫れがよくみられ、痛みを伴わないことが多いです。また発熱、寝汗、体重減少といった症状も出現することがあります。こうした症状がみられたときは、なるべく早めに病院やクリニックへ受診することが大切です。リンパ腫には100種類近くの病型があるためまずは生検(病変の一部を採って、顕微鏡で詳しく調べる検査)を行う必要があります。部位によっては生検を行え診療科が異なりますので適切な診療科への紹介をさせていただきます。治療については、悪性リンパ腫のタイプと進行度に応じて、治療を行わずに経過観察をすることもありますし、治療が必要なタイプであれば化学療法や放射線療法などが行われます。
多発性骨髄腫
多発性骨髄腫は、形質細胞という体内に侵入した細菌やウイルスなどの異物から体を守る抗体をつくる働きをもつ細胞が腫瘍化する病気です。とくに50歳以上の中高年に多く見られます。がん化した形質細胞(=骨髄腫細胞)は異物を攻撃する能力がない抗体(M蛋白)を作り続けるため様々な症状が出現してきます。治療が必要となる症状は高カルシウム血症(血中のカルシウム濃度が高くなる)貧血、腎機能の低下、骨病変による骨折といったものが一つでも認めた場合です。症状を認めない場合は治療を行わずに経過を見ることもあります。治療は、抗体療法や免疫調整薬、ステロイドによる化学療法が中心となりますが、放射線治療などを組み合わせることもあります。
骨髄異形成症候群
骨髄異形成症候群は、造血幹細胞のうち、骨髄系細胞に生じた異常が原因となる病気のひとつです。造血幹細胞がきちんと成長しないため、未熟な血液細胞が増え、正常な血液細胞が減少することにより様々な症状を起こします。未熟な血液細胞は見た目が正常な細胞と異なるため異形成と表現します。高齢者に多く認められる病気です。赤血球、白血球、血小板のすべてが減るケースもありますし、特定の血球のみが減るケースもあります。代表的なものとしては、赤血球の低下に伴う症状(動悸、息切れ)、血小板の低下による症状(身に覚えのないあざや出血症状)、白血球の減少に伴う症状(発熱)などがあります。治療は、血球の低下が高度でない場合は経過観察を行うこともありますが、血球の低下が高度になると輸血を行っていきます。病型によっては白血病になるリスクが非常に高い場合、化学療法を行うこともあります。若年の場合、造血幹細胞移植を行うこともあります。