予防接種とは
予防接種は、細菌やウイルスなどの病原体からつくったワクチンを接種することによって免疫をつけ、特定の病気になりにくくする目的で行われます。また、たとえその病気になったとしても軽く済む効果も得られます。使用するワクチンは、感染症の原因となる各種の細菌やウイルスの病原性を弱めたり、また、それらを無毒化したりしてつくられます。これを注入することによって、体内に抗体をつくらせ、当該感染症にかかりにくくします。
当院では、インフルエンザ、肺炎球菌、風しん、麻しん、風しん麻しん混合、帯状疱疹、新型コロナワクチン、子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)などの予防接種を受けることができます。
当院で実施する予防接種
インフルエンザ
インフルエンザは毎年12月~翌3月頃にかけて流行しますが、事前に予防接種を受けることにより、罹患リスクを軽減することができます。このワクチンの持続有効期間は約5ヵ月、接種後に効力を発揮するまでに要する時間は約2週間です。そのため、予防効果をより高くするためには、遅くとも12月中旬までに接種を終えられるようにしてください。
肺炎球菌
肺炎とは、主に細菌やウイルスなどの病原微生物が肺に感染して炎症を起こす病気です。呼吸器の防御機能が病原微生物を排除できなかった場合や、病気やストレスなどのために免疫力が落ちているときに罹患しやすくなります。とくに、高齢者や基礎疾患を持っている方は肺炎にかかりやすく、しかも治りにくい傾向がありますので注意が必要です。このようなリスクをできるだけ避けるには、肺炎球菌ワクチンの接種をお勧めします。これによって肺炎の原因菌で最も多いと言われている肺炎球菌による感染症を予防し、重症化を防ぎます。
なお、接種は1年を通していつでも可能ですが、接種後5年以内に再接種を行うと、注射部位の痛みが強く出るケースがありますので、再接種を希望される方は、5年以上の間隔を空けてください。接種の年月日は、忘れないようにメモしておきましょう。
風しん・麻しん(風しん麻しん混合)
風しんは、風しんウイルスに感染することで発症する病気です。2~3週間ほどの潜伏期間を経てから、はじめに軽い風邪のような症状が起きます。その後、37~38℃の発熱、赤い発疹、後頸部リンパ節腫脹などの症状がみられるようになります。小児の場合、これといった治療をしなくても発疹や発熱といった症状は3~4日ほどで自然に治ります。しかし、成人になってから発症するようになると症状が重く、発熱や発疹の期間が小児よりも長くなります。また、妊娠して間もない妊婦が感染してしまうと、生まれてくる赤ちゃんが先天性風しん症候群に罹ってしまうことがあります。具体的には、心臓の奇形、白内障、聴力障害などをもって生まれてくる可能性があるので、事前のワクチン接種が大切です(妊娠中や妊娠の可能性がある場合は接種できません)。
麻しんは、一般的には「はしか」と呼ばれている病気です。麻しんウイルスによって発症します。感染力がとても強いのが特徴で、38~39℃の熱がみられるほか、咳、鼻水、喉の痛みといった風邪によく似た症状もみられます。発熱については、一度おさまるものの再び39~40℃の高熱が出て、赤い発疹も現れるようになります。風しんや麻しんを予防するには、それぞれのワクチンを接種したり、風しん麻しん混合ワクチンを接種するようにしてください。
帯状疱疹
帯状疱疹は、水ぼうそうに罹患したことがある方にのみ発症する病気です。水痘・帯状疱疹ウイルスに感染すると、水ぼうそうが治った後も同ウイルスが体外へは排出されず、神経節に潜伏し続けています。その後、加齢あるいは過労やストレスなどで免疫力が低下すると水痘・帯状疱疹ウイルスが活発化し、神経節に沿ってチクチクする痛み、紅斑、水疱などがみられるようになります。人によっては、皮膚症状がおさまった後もピリピリした痛みがいつまでも残ることがあります(帯状疱疹後神経痛)。このようなリスクを減らすため、帯状疱疹ワクチンを接種するようお勧めいたします。ちなみに帯状疱疹ワクチンは2種類あります。ひとつは50歳以上の方を対象とした生ワクチン(ビゲン)です。もうひとつは50歳以上の方と18歳以上の方で帯状疱疹に罹患するリスクの高い方を対象とした不活化ワクチン(シングリックス)です。なお後者のワクチンは、計2回の接種が必要となります。
新型コロナワクチン
新型コロナウイルス感染症を予防するために行うワクチンになります。ちなみに全額公費負担による接種につきましては、令和6(2024)年3月31日で終了しています。
なお秋~冬の季節限定になりますが、各自治体で65歳以上の高齢者等を対象にした定期接種を行います。この場合も有料となりますが、一部公費負担で受けられます。詳細につきましては、お住いの自治体の公式サイトをご参照下さい。
定期接種の対象外の方で同ワクチンの接種を希望される方につきましては、任意接種扱いとなります。したがって費用は全額自己負担となります。
子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)
子宮頸がんを予防するためのワクチンで、HPV(ヒトパピローマウイルス)に感染することで発症することから、HPVワクチンとも呼ばれます。
同ワクチンは、小学6年生~高校1年生の年齢に相当する女子を対象にした定期予防接種になります。対象となる方については全額公費負担となります。なお子宮頸がんワクチンは、全部で3種類のワクチン(ガーダシル、サーバリックス、シルガード9)があります。接種前にどのワクチンを選ぶか決める必要があります。それぞれの特徴は以下の通りです。
子宮頸がんワクチンの種類
- サーバリックス(2価ワクチン)
- 子宮頸がんの原因となるHPVは30種類程度あるとされていますが、なかでも16型、18型の2つのタイプによって引き起こされる子宮頸がんが日本では6割以上を占めるとされています。その16と18型を予防するとされているのがサーバリックスです。2価ワクチンとも呼ばれます。接種回数は計3回になります。接種間隔ですが、初回の接種を終えた1ヵ月後に2回目を受けます。3回目は初回の接種後から6ヵ月が経過してから打ちます。
- ガーダシル(4価ワクチン)
- 子宮頸がんを発症させやすいとされるHPV16・18型だけでなく、尖圭コンジローマの原因となる6・11型(低リスク型)についても予防効果があるとされるワクチンです。接種回数は計3回です。接種間隔については、初回の接種から2ヵ月後に2回目を受けます。また3回目は、初回の接種から6ヵ月後に打ちます。
- シルガード9(9価ワクチン)
- 4価ワクチンで予防する型を含め、16・18型と同様のハイリスク型(子宮頸がんの原因となる型)とされる31・33・45・52・58型のHPVにも効果があるとされ、9価ワクチンとも呼ばれています。なお2価と4価のワクチンは子宮頸がんの原因となる50~70%を防ぐのに対し、9価は80~90%を防ぐとされ、高い予防効果が期待できます。接種回数ですが、15歳になるまでに初回接種を行った場合は計2回です。この場合の2回目は、初回の接種から6ヵ月後になります。また初回の接種が15歳を過ぎると計3回の接種となります。接種間隔に関してですが、初回接種の2ヵ月後に2回目、初回接種の6ヵ月後に3回目を打つことになります。
副作用について
種類に関係なく、注射部位に発赤、腫脹、疼痛等がみられるようになります。このほか全身症状として、頭痛、発熱、筋肉痛、関節痛、失神などが現れることもあります。
なお子宮頸がんワクチンに限ったお話ではありませんが、可能性としては非常にまれなケースですが、接種をすることで重度の健康被害が生じることもあります。日常生活に支障が及ぶような場合は、予防接種健康被害救済制度というのがあります。詳細については、厚生労働省の公式サイトをご覧ください。